「脳の意識 機械の意識」

ブレードランナーや攻殻機動隊の世界を垣間見れる本と言えばよいでしょうか。人間は「You are nothing but a pack of neurons.(ニューロンの塊にすぎない)」(フランシス・クリック)であり、「脳とは一風変わった電気回路にすぎない」のに、現在のコンピュータを含む電子機器が持たない感覚意識体験「クオリア」が、脳を持つ者に生起するのはなぜかについて科学的に論じています。

著者は意識の担い手、即ち意識の自然則(自然則とはそれ以上還元できない問答無用の法則で、この場合、主観側の対象であるクオリアと客観側の対象を結びつけるもの)の客観側の対象を神経アルゴリズム、特に生成モデルというかたちで実装された脳の仮想現実システムに求めています。生成モデルとは、高次の活動をもとに低次の活動の推測値を出力し、その推測値と感覚入力由来の低次の活動を比較して誤差を算出し、その誤差を用いて高次の活動を修正することであり、誤差が最小化されるまで繰り返し計算されることで、仮想的な世界がより現実世界に即したものとなるとのことです。そのように考えれば、意識にのぼらない情報があったり、意識が遅れをもって生じることの説明がつきます。

この生得的な生成モデル自体も変化、即ち学習すると考えてよいのでしょう。学習とは、「ニューロンへの入力と自らの出力に依存して、シナプス応答の大きさが変化する」という変化側(「ヘブ則」)によって、ニューロンの発火を引き起こしやすくなったり引き起こしにくくなったりすることを指します。

脳科学の現在を一般人にも分かりやすく説明した新書で、おすすめです。