「不合理-誰もがまぬがれない思考の罠100」

イギリスの心理学者による1992年の著作。訳者あとがきのとおり、「人が陥りやすい錯誤をこれほど広く網羅した一般読者向けの本はまず見当たりません」。にも係わらず、その後似たような本が多く出版されたせいか、この本も新刊ではもはや手に入りません。なお、サブタイトルのように、100個の事例が挙げられているわけではありません。
自身の備忘のため、目次と各章で触れられている内容について記しておきます。

01 はじめに
02 誤った印象
・手近な情報による誤謬
・ハロー効果:「目立った特長があると、それに引きずられて、他のことまでよく見えてしまう」
・デビル効果:ハロー効果の逆
03 服従
04 同調
・ブーメラン効果:「自分の考えが批判されると、それを正当化しようとして意固地になる」
・傍観者効果:「ほかに誰かがいると、わざわざ自分がかかわり合いになるのを避けようとする」
05 内集団と外集団
・リスキーシフト:個人個人に聞くより、集団で話し合ったときの方が大きなリスクを引き受ける
・集団思考:「メンバー同士が緊密に結びついた集団が極端に走りやすいこと」
06 組織の不合理性
・「株価の変動はまったくランダムであることが数学的な分析で証明されている」
07 間違った首尾一貫性
・「最初の選択の結果を過大評価してまで、最初の選択にしがみつこうとする一方で、私たちは当初の決断を撤回せざるを得なくなると、今度は逆に、その決断の結果を極端に悪く考えたがる」
・「人は不快な思いに耐えると、耐えた甲斐があったと思い込もうとする」
・サンクコストの誤謬:「ある程度の金額を投じると、無益とわかっても中止できない」
08 効果のない「アメとムチ」
・「楽しい活動でも、物質的な報酬を与えると、つまらなく感じるし、つまらない活動をやる気にさせるためには、報酬は役立たない」
09 衝動と情動
・「簡単な課題であれば、報酬が高いと成績は上がるが、高度な課題になると、逆に成績が下がる」
10 証拠の無視
11 証拠の歪曲
12 相関関係の誤り
・錯誤相関
・ネガティブケースの無視
13 医療における錯誤相関
14 因果関係の誤り
・「ある行為の原因を突き止めるときに、私たちはその行為をした人間がいつもそうした行為をするのか、めったにしないのか(略)という情報には目を向けるが、同じ状況下で他の人たちも同じような行為をするのか(何が原因かを判断するには、こちらの方が重要だ)には注意を向けない」
・基本的な属性認識の誤謬:「ある人の行動を状況ではなく、その人の性格や能力に起因するものとみなす傾向」
・「私たちは他者を、実際よりもずっと自分に似た存在だと思い込む」
・「私たちは常日頃、自分の気分や感情をまったく見当はずれのもののせいにしている」
15 証拠の誤った解釈
・代表性(または典型性)の誤謬:代表的・典型的なものの確率が高いと思い込む
・大数の法則:「サンプル数が多いほど信頼性の高いデータが出る」
16 一貫性のない決断、勝ち目のない賭け
・アンカリング(繋ぎ止め)効果:「最初に提示された数字に引きずられて判断したり、提示された選択肢の中間あたりを選ぶ心理」
17 過信
18 リスク
19 誤った推理
・満足化:「人間は心に浮かんだ選択肢の一部だけに注目し、「まずまず」の行動がとれれば満足する」
・平均回帰の原理
・ギャンブラーの錯誤:「それ以前に片方の色の目が連続して何回出たかという情報には何の意味もなく、実際には次回に球が同じ色のポケットに入る確率は二分の一のまま」
20 直観の誤り
・「数理的予測法と直観的予測法の精度を比較した百を超える研究で、二つの手法に差が見られなかった事例も一部にはあったが、人間のほうが優れていた例は一つもなかった」
・ブートストラップ法:多くの事例に対する評価の平均を取り、判断者が頻繁に逸脱する「平均的重み」を推定する
・「人事選考の面接が役に立たないだけではなく、有害ですらあることは繰り返し実証されている」
21 効用
・限界効用
22 超常現象
23 合理的な思考は必要か
・「集団への同調、そして、人目を気にすることは、集団の規範に人々を従わせることに役立つ。この心理もまた、かなりの部分生得的なものだろう。」
・「私たちの祖先が安全な場所と食べ物を確保し、次世代を育てるためには、さして合理的な思考を要求されなかった」