「歴史は「べき乗則」で動く」


今年のGW前半は初日と3日目が雨でバイクに乗れず、2日目は採用面接で半日出社しないといけなかったので、おかげで仕事と溜まっていた日常の用事がはかどりました。
この本も、しばらく読みかけのまま放置していましたが、ようやく読み終わりました。
著者は以前読んだ「複雑な世界、単純な法則」と同じ人です。

途中で放置していたのは、途中説明がやや冗長で退屈になっていたからだったのですが、もう読むのを止めようかと思って解説を読みに行ったところ、「これらの章(注:最後の三章)にこそ、他の論文や啓蒙書の受け売りでない著者の世界観が最も現れている」とあり、辛抱して読み進めたところ、確かに最後の三章はとても面白く、最後まで読んだ甲斐がありました。

この本で最初に取り上げられるのは、地震。地震は一般に知られている以上に頻繁に発生していて、「ある地域で地震の発生しなかった期間が長いほど、近い将来にそこで地震が発生する可能性は低くなる」というところまではわかっても、「大きな地震が小さな地震とは違う原因で起こると示唆するものは、まったく何もない」のであって、大地震を予測することは不可能であることが述べられています。
その後、山火事や生物の絶滅においても同様に、そのインパクトがどの程度大きくなるかは予測不可能であり、偶然に左右されると述べられています。
これは臨界状態に共通するものであるようです。

臨界状態では、秩序の力とカオスの力とが不安定なバランスの上で争っており、そのどちらかが完全に勝つわけでもない。そしてこの争いの特徴や、それによって戦況が常に移り変わり入れ替わるという状況は、それに関与するほとんどすべての事柄の詳細には関係なく等しい。

「自己組織的」臨界状態に至るには、「外部から加えられる作用がゆっくりであることと、おもに相互作用が系を支配していること」が条件となります。

戦争や革命、科学の進化にも、こうした法則が当てはまるというのが著者の主張です。
実際、戦争による死者数を当時の世界人口で割った数では、「死者数が二倍になるたびに戦争の頻度は約二・六二分の一になった」という、べき乗則が現れます。
そのことから、歴史上の出来事を特定の人物に結びつけて決定論的に語ることは誤りであると述べられています。

人格や知性に関して他の人より影響力の強い人物がいるということは、否定できない。しかし少なくとも理論的には、我々の世界は臨界状態と非常に似た状態にあるのかもしれない。そのような世界においては、すべての人間が能力的に等しいとしても、そのうちの何人かの行動は、まさに驚くべき結果をもたらすことになる。(略)そういう人たちの多くは、確かに特別な人物かもしれない。しかしそれは、彼らの偉大さが彼らの引き起こした出来事の大きさの原因である、ということを示しているのではない。

これはまさに、私が企業再生に成功したときの実感と符合します。
誰もが成功した理由の説明を求めてきて、それを社長である私個人に結びつけようとしましたが、私には甚だ違和感がありました。
本当に何かを成し遂げられるときというのは、そんなものなのだと思います。
そしてそれはまた、何かが崩壊するときも。