「脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか」
2006年頃からカール・フリストンという神経科学者が提案してきた、脳の情報処理の原理を説明する一般的理論である「自由エネルギー原理」について、著者ができる限りわかりやすく説明して下さっているのですが、それでも十分難しい内容です。でも、そしてだからこそ、ワクワクする内容です。半分も理解できていませんが、記憶しておきたい内容をメモしておきます。
事後確率の対数=世界の生成モデルの対数+シャノンサプライズ
・事後確率p(u|s):感覚信号sが得られたという条件の下で、外環境の隠れ状態uである確率
・シャノンサプライズ:-log p(s) 感覚信号sが滅多に観測されないときに大きな値をとる
現実の問題において真の事後確率を求めるのは困難なため、脳は事後確率を求める代わりに、事後確率を近似する「認識確率」を計算していると考える。
ヘルムホルツの自由エネルギー=認識確率と真の事後確率のダイバージェンス(違いの量)+シャノンサプライズ
・シャノンサプライズは、感覚信号のみで決まり、推論を行う知覚の過程では定数とみなせる
・認識確率と事後確率の確率分布のダイバージェンスを最小にする認識確率を求める=自由エネルギーを最小にする認識確率を求める
・知覚の過程=ヘルムホルツの自由エネルギーを最小化する過程
自由エネルギー原理=自由エネルギーを最小化するように推論を行うこと
精度:分散の逆数
精度制御:信号の精度を能動的に制御して、信号のもつ意味の重大さを操作する機能
信号の精度を上げる=予測誤差を大きく捉える=注意を向ける
ドーパミン:精度を調整する役割を果たしている
前頭葉の中の仮想制御ユニットと呼ばれるニューロン群が、シミュレーションを行って可能な行為の集合の中から最適なものを一つ選んで実行する。このプロセスが、行為を自ら行っているという自己主体感を生み出す。
期待自由エネルギー=-認識的価値-実利的価値-新奇性
・人間は認識的価値と実利的価値の和が最大となるような行為系列を選択する=将来観察される成果のサプライズが最も小さくなる行為系列、または最もゴールに近づく確率が高い行為系列を選択する
・脳は、世界で起きる現象の特性を表す様々な生成モデルを作り、その生成モデルが正しいことを示す証拠をかき集めようとする
・生成モデルは、新奇性探索行動を通じた確率的随伴性の発見とその学習によって得られる
・好奇心=状態と成果の随伴性に関する不確実性を最小化しようとすること
自由エネルギー=生成モデルの複雑さ-生成モデルの正確さ
・一般に正確なモデルほど複雑になるため、両者のバランスが重要
・好奇心によって不確実性を最小化する能動的サンプリングが行われ、正確な生成モデルが学習された後、洞察のメカニズムによりモデルが縮約されて単純な生成モデルが導かれる
以上のように整理してみて浮かんだ疑問としては、このような脳のメカニズムがありながら、好奇心の個人差が非常に大きいと感じられるのはなぜなのかということ。好奇心の対象が異なるだけで、好奇心の量は個人差があまりないのでしょうか。