「直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN」

ネットの記事で見かけて買ってみましたが、注文から届くまで10日ぐらいかかりました。とても売れているようです。

私自身、特に30代前半でマネジメントになってから雇われ人であった間は「他人モード」を優先していたため、独立してからは「自分モード」のスイッチを入れる難しさを感じています。本書では、自分モードの思考を取り戻すうえで、次の4つのミッシングリンクを埋めることが必要と述べられています。

  1. 内発的動機が足りない-妄想(Drive)
  2. インプットの幅が狭い-知覚(Input)
  3. 独自性が足りない-組替(Jump)
  4. アウトプットが足りない-表現(Output)

このうち自分に最も不足しているのは「妄想」だと自覚しているので、妄想の章で書かれていることは参考になりました。イシュー・ドリブンとビジョン・ドリブンは、「現前する課題(イシュー)」と「内発的な妄想(ビジョン)」のどちらを思考のスタート地点に置くかの違いであること、イシュー・ドリブンでは「どうすれば……できるか?」(HOW-MIGHT-WE型)という問いを立てるのに対し、ビジョン・ドリブンでは「もしも……ならどうなるか?」(WHAT-IF型)という問いを立てること、などです

また、カイゼン思考、戦略思考、デザイン思考、ビジョン思考の整理の仕方は秀逸ですし、デザイン思考が平等に見えて実はセンスが要求されること(戦略思考においても本来それは同じですが)、「共創」は必然的に他人モードに偏りがちであることなどの指摘はとても肯けるものです。

とはいえ、ビジョン思考を鍛えるのにセンスは要らないといえるのかには疑問が残ります。また、カイゼン思考すらモノにすることが難しい人が、ビジョン思考に飛びついてはたして周囲に認められる何かを生み出すことができるのかについても疑問を感じます。そういう意味で、誰もが読むべき本ではないように思われるのに、この本がよく売れているというのは、閉塞感からの一種の逃げであるように感じられなくもありません。