「運は数学にまかせなさい-確率・統計に学ぶ処世術」
いかにも売らんかなのタイトルですが、原題は “STRUCK BY LIGHTNING – The Curious World of Probabilities” で、数学者が書いた確率・統計の読み物です。特段目新しい内容はありませんでしたし、ギャンブルの説明が多かったのはギャンブルに興味がない私には退屈でしたが、幾つかの説明はとても理解しやすかったので、備忘のために記しておきたいと思います。
- サイコロを4回振ったときに3が出る確率を、1/6×4で求めると、6回振ったときには確率が100%になってしまうことから、事実に反する。従って、3が出ない確率5/6を4回掛け、100%からマイナスするのが正しい。
- 3人の患者に新薬を投与したら3人とも回復したとしても、薬に何の効き目がなくても3人とも回復する確率=p値は50%×50%×50%=12.5%であり、5%以上であることから、統計的に有意とはいえない。
- 標準偏差を1とするベルカーブでは、確率の合計が95%となる領域は-196%~196%となる。多くのコインを放り上げるときの誤差の範囲は、コインの枚数の平方根の2倍で割ったものになる。従って、誤差の範囲(±x%)は98%をコインの枚数の平方根で割れば求められる。信頼水準を99%とする場合、98%を129%に増やす。
- 「比例の原理」(「ベイズの法則」の特殊なケース)とは、別々の可能性が最初の時点では同じ確率と考えられる場合、新たな証拠が出てきたら、それぞれの可能性に比例するように、最初の確率を見直さなければならないということ。
- 「モンティ・ホール問題」を比例の原理によって考えると、ドア2の後ろに車がある場合はドア3を必ず開けるのでその確率は100%、回答者が選んだドア1の後ろに車がある場合はドア2とドア3を開ける確率が半々で50%。従って、ドア3を開けるという新たな証拠を目にする確率は、車がドア1にある場合よりもドア2にある場合の方が2倍大きいため、ドア2にある確率は2/3になる。
- 「モンティ・ホール問題」の別の解き方。最初の時点ではどこに車があるのか知らないので確率は1/3。司会者が車のないドア3を開けても、最初の選択が正しいかどうかという確率には一切影響がなく、1/3のまま。従って、消去法により、ドア2にある確率が2/3となる。
- 新薬の投与によって、全くの偶然で5人の患者が全て回復する確率は、50%の5乗で1/32。新薬が特効薬か無効かが5分5分(事前確率)だとすれば、比例の原理により、5人全員助かった場合に特効薬である可能性は無効である可能性の32倍。従って、新薬が特効薬である事後確率は32/33(96.9%)、無効である確率は1/33(3.03%)。