「人は、なぜ約束の時間に遅れるのか」

B.F.スキナーを創始者とする、「徹底的行動主義」という立場に立つ心理学である、「行動分析学」に基づいた「視考術」という手法を使って、人間の様々な行動を考察している本。機能主義的すぎるきらいはあるものの、原因を「心」や「性格」に短絡的に求めないというやり方は肯けます。視考術において重要な概念は、スキナーが考え出した「行動随伴性」というもので、「───のとき(先行事象)、───すれば(行動)、───になる(後続事象)」という関係性を表すものです。

「人が同じ過ちを繰り返す理由は、そこにそのような随伴性があるからということになる。そして、むしろ、そのことを嘆く理由は「過ちは繰り返さないはず」という単純な思い込みにあるのではないだろうか。同じ過ちを繰り返すかどうかは本人がどれだけ《反省》したかによるという過剰な精神主義にも大きな問題があるように思う。」

このような考え方は、日本の製造業の品質保証・品質管理においては一般的に用いられていると考えてよいでしょう。ただ、それ以外の分野では未だに精神主義が散見されますし、自身もそのような思考に陥ることがあります。筆者が述べている通り、行動随伴性を解明したところで唯一の正解または真因が自動的に導けるわけではなく、従って行動を変容させる方法が直ちに導けるとは限りませんが、課題解決の手段としては役に立つものと思われます。