「非合理な職場 -あなたのロジカルシンキングはなぜ役に立たないのか」
著者が経営するヒトラボジェイピーという会社に興味を持ったので読んでみました。認知科学の知見を取り込んで、マッキンゼーのコンサルタント出身らしく、ソラ(状況理解)、アメ(状況の意味合い)までは巧いまとめ方をしているなという印象を持ちました。本書では認知に影響を与え歪めてしまう代表的な要因を、経験・知識からなるスキーマからの影響、推論のバイアス、集団による意思決定への影響の3つに括っています。認知バイアスとしては、代表性ヒューリスティック、利用可能性ヒューリスティック、利己的バイアス、自信過剰によるバイアスなどが、社会心理学のタームとしては、集団凝集性、集団的浅慮、アンダーマイニング効果などが紹介されています。
ソラ、アメまでの展開が巧かったのに対し、カサ(アクション)については期待したほど目新しいものはありませんでした。相手に共感し理解を示せば分かり合えるというような性善説に立たれている感じですが、自分の世界以外に殆ど関心を示さない引きこもりやマキャベリストも会社には多いので、認知科学の知見を活用して相手を操縦するという術も考える必要があるだろうと思います。特に、価値観を改めさせたり、内発動機を高めることは非常に骨が折れます。それでも、内発動機を高める方法として、裁量を与えることが有効だと書かれているのには納得しました。