「リベラル・アーツとは何か-その歴史的系譜」

サブタイトルのとおり、リベラル・アーツの歴史的系譜が書かれた貴重な本ではあるのですが、歴史教科書的な単調な叙述で、読み進めるのに苦しみました。ICUに関する最後の2章は読んでいません。

この本から分かるのは、一口にリベラル・アーツと言っても社会階級や政治、宗教の影響を受けた変遷があり、一般によく古代ギリシャに起源を求められる自由七科として語られることが多いですが、近現代的なリベラル・アーツはそれからは相当に変容しているということでしょう。自由七科がよく持ち出される理由は、単にその歴史的伝統をもって権威づけるのが最も都合がよいということなのだと思われますが、リベラル・アーツの効用について、より学問的・科学的な深掘りがなされる必要があると感じます。

従って、リベラル・アーツの統一的な定義というものはなさそうに感じられましたが、その中で私の理解に近いものはブルース・A・キンボール、新渡戸稲造、福沢諭吉によるものです。

キンボール: リベラル・フリーの理念

  • 自由、特に先験的な批評や規範からの自由を強調する
  • 知性と合理性を重視する
  • 批判的懐疑主義を含んでいる
  • いかなる見解も絶対的ではありえないという、寛容の精神を特徴とする
  • 平等性への傾向を特徴とする
  • 市民としての義務以上に、個人の意志を強調する
  • リベラル・フリーの理念を立てることは、何かのためではなく、それ自身のためである

新渡戸稲造: 教育の目的

  • 人格修養、即ち人格を高尚にすることで、最も重要
    • 他の目的は、職業、道楽、装飾、真理探究

福沢諭吉: 学問の道

  • 高尚の学者たるを要せず、又専門の芸術家たるに及ばず、唯その知識見聞を博くして、物理人事の概略を知ること

また、古代における数学の位置づけや、リベラル・アーツの近現代的な発展に対する自然科学の寄与を考えると、単に分野の幅広さや学際的ということではなく、いわゆる文系理系の垣根を持たない学問や教養というものがリベラル・アーツと呼ぶにふさわしいのではないかと感じました。