「寝ながら学べる構造主義」
この本を手に取るに至ったことは、私にとって「螺旋的発展」による「原点回帰」といえるでしょう。大学で文化人類学を学んでいた頃に構造主義が好きだと感じた記憶は全くありませんが、戦略コンサルタント時代をきっかけに構造主義を意識するようになり、その後無意識的に構造主義的な考え方をしてきたことを、本書を読んで確認できました。また、私のことを謙虚だと言って下さる友人がいて違和感を感じていたのですが、私は決して謙虚なわけではなく構造主義的なのだと認識できました。私にとってリベラルアーツの根幹にあるのは、間違いなく構造主義です。
この本を読んでみて、構造主義について他人に語っておきながら、理解が全く不十分であったことを痛感しました。マルクスが構造主義の源流の一つという認識はこれまでありませんでしたし、ニーチェの「畜群」や「自己超克の熱情」についても不勉強でしたが、何よりレヴィストロースについて全く理解が足りていませんでした。「人間社会は同じ状態にあり続けることができない」「私たちが欲するものは、まず他者に与えなければならない」という、人間が他者と共生していくための二つのルールについて改めて学べたことは有意義でした。
構造主義がリベラルアーツの根幹であることの証左として、レヴィストロースの次の言葉を残しておきたいと思います。
彼らのうちであれ、私たちのうちであれ、人間性のすべては、人間の取りうるさまざまな歴史的あるいは地理的な存在態様のうちのただ一つのもののうちに集約されていると信じ込むためには、かなりの自己中心性と愚鈍さが必要だろう。私は曇りない目でものを見ているという手前勝手な前提から出発するものは、もはやそこから踏み出すことができない。
「野生の思考」