「学校で教えない大恐慌・ニューディール」
「経済成長とモラル」に続いて、大恐慌について知るために読んでみたのですが、この本もあまり読みやすい本ではありませんでした。特に、差し挟まれている「コラム」には目的もわからないものが多く、流れを邪魔しているので、途中から読まずに飛ばしました。
著者はオーストリア学派の景気循環論に依拠しており、FDRのニューディール政策及びその前のフーヴァーによる大規模な政治介入が大恐慌からの経済回復をかえって遅らせたという主張を始めとして、大恐慌・ニューディールに関する通説への異議を唱えています。著者の主張に対しては、訳者の一人が訳者あとがきで記しているのと同じく、私ももろ手を挙げて賛成するのは難しい印象を持ちました。とはいえ、「経済成長とモラル」を読んで私もそのように間違った解釈をしましたが、第二次世界大戦への参戦が経済を回復させたと考えることの間違いについては正すことができました。
- 1940年~1994年の失業者数が745万人減少したのに対し、軍人数が1,087万人増加しましたが、「第二次世界大戦中の軍隊の仕事と一般市民の仕事とを同等なものとして扱うというやり方は、経済学者はえてしてその両者を二者択一のものとして扱いがちだが、現実を見るととんでもない愚鈍さを表している」(ロバート・ヒッグス)
- 財政支出はGDPの構成要素の一つであるため、政府が財政支出を拡大するときにはGDPの数値も上がるが、「国防総省が契約した財・サービスの百万ドルの増大というのは消費者による百万ドルの財・サービスの出費と比べると生産性が低い」
- 戦時中は物価統制が課されていたため、消費者物価指数の上昇速度は抑えられており、インフレ調整済みの実質GDPは恣意的なものとなる
- 「1940年代はじめの大恐慌の見かけ上の終息は、ほとんどが統計上の錯覚であった。真の繁栄がもどってきたのは、動員解除の後、つまり連邦政府がアメリカ経済の締め付けをやめ、再び民間投資家と企業家が資源を管理することが出来るようになった後のことであった」
今回のウイルス禍でもまた、ケインジアンばかりが大手を振っていますが、リバタリアンの考えにも耳を傾けるべきだろうと気付かせてくれた本ではありました。