「脳はなぜ都合よく記憶するのか」


法社会学の研究者が、人間の記憶はいかに当てにならないかについて書いた本ですが、私にとっては他の本で読んだことのある内容が多く、さほど新しい発見はありませんでした。憶えておきたいことだけ、記しておきます。

  • 人の誕生後ほぼ同時にニューロンの「刈り込み」が始まり、思春期に入ると終わるが、記憶と思考にかかわる脳の重要な領域のニューロン数は、新生児より大人の方が41%少ない。
  • ジャック・ションコフらによる2012年の報告書によれば、成人になってから思い出せないほど幼い時期であっても、逆境を経験すると永続的な影響を残す可能性がある。
  • トマス・シリングらによる2013年発表の研究で、記憶の逆U字仮説は具体的に立証された。ストレスホルモンのコルチゾールの量が適切なレベルまでは記憶力は向上するが、最適レベルを超えると徐々に低下する。
  • 一般的に三年以内の出来事は実際より前だと思い、三年以上前の出来事は実際より最近だと感じられる。
  • マイケル・ボードリーらによれば、ニューロンの結合が繰り返し強く活性化されると、その場所でカルシウム依存性プロテアーゼであるカルパインが活性化し、カルパインがシナプスの構造を変え、活性化した記憶細胞の間の結合をより強くする。カルパインが現れたときだけ、単純な経験から長く続く記憶への変化が起こる。
  • プリオンの主な役割は、長期記憶を形成するシナプスを安定させることにより、長期増強とカルパインの流入がすでに起こしている物理的変化に永続性を加えること。
  • 記憶は思い出すたびに効率よく検索され、吟味されると、また一から作り直され、ふたたび貯蔵されている。
  • ディーン・バーネット曰く、海馬は真新しいニューロンが形成される、脳内の数少ない場所の一つで、関連する情報を全て結びつけ、新しいシナプスの形成により、それを新しい記憶へ符号化する。
  • 米国小児科学会は2011年、2歳以下の子供には画面を全く見せるべきでないと明言している。
  • エミリー・プローニンらの2001年の論文によれば、自分は内に秘めた思考や感情といった本質を殆ど表に出さないが、他者のそれは見て取れると多くの人が信じている。
  • レイノル・ジュンコとシェリア・コットンの2012年の論文によれば、マルチタスク、特にフェイスブックとインスタントメッセージの使用と学業成績は、著しく逆相関の関係にある。
  • アルファ波はタスクスイッチで、無関係なことの思考を止める役割がある。
  • 運転中の電話の危険性は手が使えなくなることではなく、人にはマルチタスクができないこと。