「記憶力の正体-人はなぜ忘れるのか?」

記憶をセルフコントロールする術がないものかと思い読んでみましたが、さほど目新しい知見は得られませんでした。記憶力を高める方法として覚えておきたいのは次のとおりです。

  • 言葉の記憶より画像の記憶の方が忘れにくい
  • 一つの感覚だけでなく複数の感覚に基づいた体験が記憶に残りやすい
    • バイクで見た景色の方が車から見た景色より憶えているのはそのせいか?
  • 記憶の定着にとっては、頭の中に「たたき込む」より、頭の中から何度も「引き出す」ことの方が重要
  • 同じ視点で繰り返し思い出すより、異なる視点で思い出す方が、記憶の誤りを増やさずに多くの正しい記憶を回復できる

反対に、忘れる方法としては、「検索誘導性忘却」という現象が参考になりました。ある出来事の特定の側面だけを積極的に何度も想起させて、そちらに注意を集中させることで、注意が向けられていない側面が忘却されるそうです。

「脳科学は人格を変えられるか?」「学ぶ脳-ぼんやりにこそ意味がある」にも書かれていたとおり、記憶は想起の際に再構成され、変化するものですが、その理由について著者が、「私たちが現在から未来へ人生を歩み続け、新たな経験を蓄積し続ける限り、想起の主体である自分(自己)が変化するから」と述べているのには納得感を感じました。そう考えると、記憶の不確かさというのも愛すべきもののように思えます。