「モチベーションの新法則」

モチベーション理論(どこまで科学的な理論と言えるかどうかはさておき)を一通り学べる良著で、マネジメントの立場にある人は一度読んでみることをおすすめします。

参考になったものは次のとおり。

  • 相対比較と個人内比較
  • 上司の行動ととして最も重要なのは、①仕事を進捗させること、②人間として尊重すること(T.M.アマベール、S.J.クラマー)
  • 父性原理と母性原理(河合隼雄)
    • 父性原理:よい子だけがわが子
    • 母性原理:わが子はみんなよい子
  • 成功追及動機と失敗回避動機(アトキンソン)
    • 成功追及動機>失敗回避動機:成功確率0.5のときにモチベーション向上
    • 成功追及動機<失敗回避動機:成功確率0か1に近いときにモチベーション向上
  • 自己決定理論(デシ、R.M.ライアン)
  • 防衛的悲観主義(J.K.ノレム、N.キャンター)
    • 過去のパフォーマンスに対してポジティブな認知をもつが、将来のパフォーマンスに対してはネガティブな期待をもつタイプ
  • 知能固定観と知能漸増観(ドゥウェック)
    • 知能固定観:業績目標をもちやすい
    • 知能漸増観:学習目標をもちやすい

一方で、納得できなかったのは、自動動機理論(J.A.バージ)に関する説明の部分。自動動機理論自体は納得できますが、それが機能するのはあくまで自身が肯定的に受け止めている環境刺激の場合であって、「勝利」や「成功」といった言葉や、創業者の理念やクレドに対して、当人がポジティブなものとして受け止めておらずしらけている場合には、それらが目に入ることによって無自覚にモチベーションが高まるとはいえず、かえってネガティブな感情を誘引しかねないのではないかと思います。私には、そういったものをやみくもに社内に貼り付けることに効果があるとは考えられません。そういったものの効果が得られるのは、トップマネジメントがそれらに本気で価値を置いていることを具体的な行動で示せている場合に限られるでしょう。